スパコミ会場にて。 スマホ打ちにくい。 はよネットつながってくれ。

おしどりはかくありき

「せえんぱぁーい」
「うるさい寄るな」
飛び付くのだめの額にばちんと音がする勢いで千秋の掌が伸びる。
振り回すのだめの大きな手は身長差に相応しく千秋に届かない。
「うぅ～」
「もう少しで終わるから待ってろ」
そう言って押しやったのだめの額にかかった髪を指の背でするりとかきあげると、更に頭に手を置きくしゃりとかき混ぜる。
それだけでのだめは笑み崩れ、くるりとターンしてピアノに向かう。
程なく聴こえてきた絶品の音色（知らない曲だったけど）に向かいの男の口許が綻んだ。

「・・・・あほくさ」
呟いた声に総譜に落としていた視線を向けてきた千秋に何でもないと手をふる。
変なやつだななんて失礼な台詞と一緒にまた視線を落とす。
パリでも思ったけど大学時代から変わらないと思ってた親友は大層甘い男に成り下がっていた。
いや喜ばしいことなんだが。

やがて、よし、の呟きと共に閉じた総譜を机に置いてそそくさ（としか形容できない）とピアノを弾くのだめの元に向かう顔は穏やかというかやに下がっているというか・・・
人のイチャイチャなんて見てても面白くないので（ていうかもう飽きた。無意識に四六時中なんだから）置いていた荷物を掴んで立ち上がる。

「お前ら、飯食わせてやるからキリいいところで家来いよ、じゃあな」
そして振り向かずに練習室を出た俺の背中にピアノを弾く手もそのままに（音が跳び跳ねたけど）裏軒マーボ！と騒ぐのだめの声と、キリがいいって・・・と呟く千秋の声が追ってきた。

孔雀、と形容したフランスの友人たちを思い出してやっぱりひとりで笑ってしまった。